今回は私の専門である腎臓領域について少し書いてみる。
若干愚痴も混じるがご勘弁を。
腎不全が末期になってくると腎代替療法(血液透析、腹膜透析、腎移植)が必要になる。
末期腎不全とはどれぐらいをいうのか?健康診断のeGFRをみてください。
eGFR<15で末期腎不全の領域であるが、透析が実際に必要になるのはeGFRが一桁になってきてからが多い。もちろん他疾患の合併など、患者さんの状況によってはそれよりも早いこともあるので要注意。
最も多い腎代替療法である血液透析でいうと週3回、1回4時間というのが一般的なスケジュールである。
血液透析をしている患者さんの半分は糖尿病が原因とされている。
外来でたまに聞かれる「腎不全は治りますか?腎機能は良くなってきますか?」
という質問。
答えは「場合による」だ。
曖昧かもしれないが一律の答えは存在しない。
急性腎障害や急速進行性糸球体腎炎による腎機能低下であれば原因の除去や治療により改善する可能性もある。
糖尿病や高血圧などで慢性的に傷がついてきた腎機能は元に戻らないことも多い。
そういった患者さんには年間にどれぐらいeGFRが低下してきているかを明示し、このスピードをなだらかにしてあげるのが一番の治療ですとお話する。
そのために大事なのは血圧、血糖含め生活習慣の管理だ。禁煙ももちろん推奨する。
蛋白尿の有無によっては近年登場したSGLT2阻害薬という素晴らしい薬も選択肢になる。
なだらかに落ちてきている腎機能も他のイベントが生じた際にガクッと階段状に低下する。それを繰り返すことで予想以上に腎機能が早くに悪化してしまうこともある。
特に高齢者が増えた現代では心不全とともに腎機能も一緒に悪くなるケースはかなり多い。
巷には腎機能を自力で良くする!といった謳い文句の本も出版されている。
名前は伏せるが糖質関係で著名な先生のクリニックではホームページに「腎臓合併症を完全に治す」とかかれてある。
適切な医療、情報を判別できないと怪しいものに飛びついてしまう人も多い。
まともな医者は患者さんみんなを透析にしたいなんて一切思っていない。
しかし腎臓に詳しくない医者が慢性腎不全を見ていることも多い。
開業医から「腎不全が進行してきましたので透析の準備をお願いします」なんて紹介でくる患者さんもいる。もっと早く紹介してよ!と思わず言いたくなることも多い。
ヘルスリテラシーは大切です。
信用できる医者を見つけることも大事だが、採血結果などを自分でも時系列で確認したり、疑問を医者にぶつけてみることも大事。
医者は全知全能ではない。得意分野もあれば不得意な分野だってたくさんある。
質問しにくい医者なのであればそれはいい医者ではない。セカンドオピニオンとして他の医者を探すのも一つの手段であろう。