近年積極的に転職活動しようという風潮がある。
医者の世界もリクルートやm3といったエージェント経由で様々な条件で転職先を探すことができる。
私も数年前に転職エージェントに今の病院を紹介してもらった。
私は卒後からずっと大学病院とその分院に勤めていたので、エージェント経由で転職を勝手に進めていたことについて、教授を含めた上級医から若干の叱責もあった。
しかし概ね円満に事は進み、無事に今の職場に移ることができた。
私が転職した理由としては、
①医師としてやりたいことが増えた。
②収入UP
主にこの2点だ。
他職種でもこの2点で転職を決める人が多いのではないだろうか。
①について
私は内科医であるが、腎臓領域においては内科医師が透析のためのシャントの手術やPTAといった治療を行うことがある。
もともとの大学病院ではそういった内科/外科との役割分担がきっちり分かれていて、教授の意向もあり内科が外科的な処置を行うことは少なかった。
私自身としては後期研修医を終え、徐々にこれらの手技も身に着けたいという気持ちが高まっていたことから転職を決意した。
②について
大学病院というのは一般的には薄給だ。
いわゆるバイトをしないと市中病院並の給与は得られない。
バイトについても医局から割り当てられるものに限られていた。
これらを踏まえ現在の職場に決めた訳だが結果としては非常に満足している。
①②ともに十分に満たされている。
転職した後に、①②以上に「他病院で経験を積む」重要性を痛感した。
なぜならば病院というの施設毎の違いがかなり大きいからだ。
エビデンスに基づいた治療として、どんな病院であれ大抵は同じベクトルであたることが多い。
しかし、エビデンスのみでは確立されていない領域も多数あるのが医療である。
そのため施設毎によって治療方針が変わるケースもある。
大学病院では若手に裁量権があまり与えられないこともあり、私もやきもきした思い出がある。
どんどん攻める治療をする施設もあれば、有害事象のリスクを考慮して早めに治療を撤退する施設もある。
こういった違いは学会や勉強会などで見聞きはするが、一つの施設にずっといるままでは実際に経験することはできない。
見聞きしたことがある、というのと自ら考え処方する、というのには大きな違いがある。
この経験という点は医者のみならず他職種でも同様なことが言えるだろう。
転職することで知らない世界を知ることができる。コンフォートゾーンから抜け出す。
これだけでも十分な価値がある。